横内 目的を持つのは何より大切なんだよ。それにしても、『ルバン三世』好きな貴方のDNAがちゃんと継承されているんだね。
寺脇 そうですね。ほんとに巧いです。
横内 あなたも巧いじゃない、よく描いてるよ。
寺脇 僕も漫画家になりたかったんです。でも、それは中学ぐらいで諦めました。プロになるのは絶対無理だと思いましたし、自信が持てないものは続けていけないと判断したんですよ。人に負けると思ったものについてはできないですね。
役者については自信を持っていたのでね、バイトをしても何をしてもやっていこうと思えたんです。だから、若い人たちに限らず今何かに悩んでいる方には好きなことを見つけてほしい。そして、好きなことを見つけた人には、自分に自信を持って生きてほしいです。
本誌 去年は、2002年10月より約6年間やってこられた『相棒』が映画化されてアカデミー賞も獲り、何か一つ卒業したというか、『マルグリット』で新たな始まりという感じでは?
寺脇 そのとおりです!!
横内 そうだよ、優秀助演男優賞を獲られて、まことにおめでとうございます。
寺脇 いや~ありがとうございます!
横内 それに、『マルグリット』が終わるとまもなくして『星の大地に降る涙』を上演。こう、テレビや映画といったものと舞台のお仕事はどんなバランスでやられているのかな。
寺脇 そうですね、じつは『地球ゴージャス』の舞台に入る前に、二時間ドラマの撮影もあるんですよ。でも、バランスを考えて何かを辞めるというのはもったいないとも思いますしね、ま、1年に舞台が二本、そういう年もあっていいだろうと思っています。
横内 僕と寺脇さん、まあ他の共演者も同じかもしれないが、今回のミュージカル『マルグリット』では、これまでに接触したことのないようなキャストの方々、専門の方たちに混じってやってきたわけだ。貴方はさることながら、僕なんかこの年でオーディョンを受けるなんて青天の霹靂だったんですよ(笑)。でも、やはり新しいものに挑戦するためにはどうしても越えなきゃならないものがあって、あえて僕はそれに体当たりで臨んだわけですよ。そのお陰で、ご一緒にステージに立てた。とはいってもね、僕らには相当のプレッシャーがありましたよね(笑)。
寺脇 ありましたね~。僕は歌うのが嫌で、嫌で(笑)。最初のころは、「うわっ! また歌の稽古だよ」ってブルーな気分でしたよ(笑)。
オーディションの前にテープをもらって聴いたときキーが高くてね、なんべんやっても出ないし。オーディションでも当然出ませんでしたよ。そしたらね、脚本のクロード=ミッシェル・シェーンベルクがピアノの方に、音を一個下げたバージョンを弾くようにと指示をして、「この歌はキミしか歌わないんだから、下げてもいいんだよ」と言ってくださった。これは脈があるのかな?と思ったんですけどね(笑)。
横内 それは、よほど気に入られたんだね。寺脇さんがそうだったとは全然知らなかったけど、僕も悲惨だったよ(笑)。もう上がって、歌詞を忘れて絶句したんだから! 終わった後、憮然とした気持ちで帰って来たんだ(笑)。僕の場合も高くて声が出ないと言ったらキーを下げてくれて、それで何となく出たんですよ。
寺脇 今ではそれなりに楽しんでいますけど、それはまたシェーンベルクお陰で、彼が稽古場にいらしたときにこう言ってくれたんです。「君、芝居のときはすごくエネルギーを出してやっているのに、歌にくると何であんなに弱々しくなっちゃうの?」って。だから僕は、「じつはいろいろなことを考えて自信がないんですよ」と正直に言いました。そうしたら、「君は役者なんだからいいんだ。感情で歌ってくれよ。汗かくぐらい一生懸命歌ってくれ」って。そう励まされてやったら、「OK!」って言ってくださった。
横内 なるほどねぇ、それで吹っ切れた。
撮影/桑原 靖
