横内 でも、それが10年8ヵ月も司会を務められて、番組はその後も続いているのだから凄い長寿番組ですよ。
寺脇 いや~スタート当初は数字が伸びなかったんですよ。それが、半年経ったころですね、夏休みの最後の週にいきなり視聴率が上がった。おそらく、夏休みの終わりで、家族がみんな家にいてテレビを見ていたとか、たまたま条件が揃ったんだと思うんですけど、それからどんどん数字が伸びました。そうなって初めて「やっぱり僕が番組づくりでこだわってきたことは間違ってなかった」と思いましたよ。
横内 俳優が本の台詞を覚えてその役を演じるというのと違って、司会業というのは、むき出しの寺脇さんが出てくるわけじゃないですか。さきほどおっしゃったように、視聴者は役を演じているときのあなたを、司会をされているときのイメージで見るかもしれない。寺脇さん自身の中で、そういうところでの操作、見せ方には苦労されたんじゃない?
寺脇 そうですね、番組をやりながらその思いはずっとありましたね。けれど、僕の周りにいる信頼できる方といろいろお話するたび、「役者の邪魔になってないと思うよ」とよく言われましてね。そういう意見を聞いてちょっと安心した部分もあったんです。
まあ、フリートークと言いながらも、「次のコーナーは○○です」といった決まりのセリフがありましたしね。多少の感想を加える程度で、トークの達人的なポジションでなかったのが良かったのかもしれません。要するに、番組の進行役です。自分に個性を持った司会ではなかったと思うんですよ。そういう面では、個性的な寺脇康文を前面に出さなかったことが結果、功を奏したような気がします。
横内 逆に、だからこそいろいろなものに対応できるスタンスが残っていたのかな。
寺脇 ええ。やっていく中で、ゲストの方から「ブランチだったら、寺脇さんの司会だったら、また出てもいいよ」と言っていただける番組になっていきましたよね。とにかく、出ていただいたゲストの方に気持ちよく帰ってほしい。「あの番組だったら出たい」と思ってほしい、その思いでやっていましたから。
細かいことなんですけどね、ゲストへの質問の中身もチェックして、「自分が聞かれたら嫌なこと」は聞かないように。「今回の見どころは?」というあいまいな聞き方は止めましょう、と。役者はみな全身全霊をかけてやっているし、それなら「テーマ的に一番見てほしいところは何ですか」とか、問い方を変えてゲストの方が話しやすいようにしましょう、といった提案はしてきました。
横内 良い財産をつくりましたよね。
寺脇 そうですね。いま『ミューズの晩餐』という番組の司会をやらせていただいていますが、ふだんお会いする機会のない方と出会える、そう思ったのが決め手でした。音楽関係の方、とくにクラシック関係の方とお話する機会なんてめったにありませんからね。
横内 俳優生活だけではなかなかそんなチャンスは味わえないですよ。多方面の方たちと触れ合い、またそういった出会いを通してさらに人脈も広がりますしね。それも全部貴方の財産になりますよ。
寺脇 何より、ゲストの方の真の人生を聞くことができる。「この方はこういう考えのもとに、こういうポリシーのもとに生きていらしたんだな」という発見もたくさんあるし、自分にとって非常にプラスになっていますね。
撮影/桑原 靖
